馬車からフェラーリに至る ルーマニアワイン1990年代には、ルーマニアワインがワインの世界で正当な位置を占めるのには長い時間を要するだろうと思われました。ルーマニアがヨーロッパにおける主要なワイン生産国であっても、当時の政府はほとんど何の保護策も講じることはありませんでした。暗黒の共産主義時代と当時のワイン産業に起こった混乱は、質より量を重要視するワイン生産者の思考にまだ影響を与え続けていたのです。しかしながら、驚くべきスピードで発展を遂げた中小のワイナリーによって引き起こされた新たな波のおかげで、この15年の間に事態は劇的に変化しました。荷馬車からフェラーリに至る発展が、不可能とも思える短時間の間に成し遂げられたのです。
ルーマニアワインが質の高いワインとなる大きな可能性を持っていることに疑いはありません。ルーマニアは中東欧最大のワイン生産を誇り、6000年にさかのぼる欧州大陸最古の歴史を持っています。ルーマニアは、フランス(あるいは北海道)と同じ緯度に位置し、その気候と土壌は、世界的に最もワイン生産に適しています。そして在来種においても国際品種においても、多くのブドウ品種を有しています。最近フェテアスカ・アルバ(白い乙女)、フェテアスカ・レガーラ(王家の乙女)、フェテアスカ・ネアグラ(黒い乙女)などのルーマニア在来品種のブドウが、世界的な注目を浴びています。日本でも、「2016ベスト・ワイン・ジャパン」国際コンテストにおいて、フェテアスカ・ネアグラはプラチナメダルを獲得しました。 15年前のルーマニアのワイナリーを訪れたなら、「まだまだだな」と言って、さしたる興味も持たないでしょう。しかし、今日のルーマニアのワイナリーを訪れたら、息をのむようなスケールで成し遂げられたその完璧さに目を見張るでしょう。もちろん、「まだなすべきことがある」と言うかも知れませんが、間違いなく今回は15年前とは違い、大きな興味と期待をもってそう言うでしょう。新世代のワインメーカーは、戦前のワイン製造技術の良い所と今日の最新技術とを組み合わせることに注力しているのです。
西ヨーロッパのワインメーカーが、80年代や90年代、あるいは2000年代初頭の製造技術を用いているのに対し、ルーマニアのワインメーカーは、2010-2016年の最新技術を用いています。ルーマニアの新世代のワインメーカーは、自国はもちろんのこと、フランス、イタリア、スペインやワイン新世界であるオーストラリアやチリでも学んでいます。彼らの知識欲と高品質を求める飽くなき渇望には瞠目すべきものがあり、このことから私はルーマニアワインの将来に自信を持って賭けているのです。 彼らはルーマニアにおいて、これまで最高品質のワインを製造することを可能にし、そしてまた現に製造している最初の世代であると私は思います。過去の15年間はエキサイティングではありましたが、これからの10年、15年のことを考えると、私は興奮すら覚えるのです。新たに植えられたぶどうはより熟成し、新世代のワインメーカー達はより多くの経験を積む... そんな彼らの作るワインに思いを馳せると、私はもう待っていられないほどの胸の高鳴りを覚えるのです。 15年前のルーマニアのワイン産業を経験することは、あたかも荷馬車に乗るようなものでした。それは懐古趣味ともあいまってロマンチックではありますが、速度は遅く、時々不快な臭いに悩まされます。今のルーマニアのワイン産業を経験することは、フェラーリに乗るのと同じで、ハイテクで速いし、セクシーでもあります。 日本においてもルーマニアワインの評判は上々です。1990年代後半、ルーマニアワインはバルクで輸入され、日本の国産ワインの増量剤としてのみの用途でしたが、今日事情は大きく変化しました。現在150以上のルーマニア・ワイン・ブランドが市場に出回り、それらへの興味は確実に伸びてきています。 Daniel Alexandru BERES
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