ルーマニアのワイン法更新:2019年1月21日
ルーマニアワインを理解するために、ルーマニアのワイン法を理解する必要があります。欧州連合(EU)のワイン法は世界で最も厳しく、消費者を第1に考えて作られた法律だと言えます。特にラベルの表示法が明確に定められ、消費者にとって大変分かりやすくなっています。その厳しいEUの中でも、ルーマニアではさらに厳しい基準があり、ワイン法律に関してはかなりの先進国です。葡萄の栽培や果汁の発酵方法からボトリング環境までの全てのワイン造りプロセスがしっかり管理され、品質や安全性の面でルーマニアワインは業界最先端だと言えます。
ルーマニアのワイン法はルーマニアの農業省により管理されています。各ワインメーカーは法律を厳守し、消費者に明確な情報を提供しなければなりません。ルーマニアのワインラベル表示法は原産地名称を誤用や盗用から保護し、消費者に正しい情報を提供することを目的として定められています。また、ワインというものはそれぞれの生産地の文化に強く根付き、各生産地の歴史や伝統に重点が置かれています。
ルーマニアワインの種類ルーマニアで様々なワインの種類が作られています。それぞれの種類毎に、法的な枠組みがしっかり整っています。ルーマニアで作られているワインの種類は下記の通りです。
1. ワイン ワインはルーマニア語で「Vin」と書き、「ヴィン」と発音します。ルーマニアでのワインの定義は次の通りです:「ワインはフレッシュな葡萄又はフレッシュな葡萄果汁を発酵したことにより得た飲料です。葡萄以外の原料は認められていません」。 2. スパークリングワイン ワインはルーマニア語で「Vin spumant」と書き、「ヴィン・スプマント」と発音します。ルーマニアスパークリングワイン法の詳細はこちらへ。 3. アロマティックスパークリングワイン アロマティックスパークリングワインはルーマニア語で「Vin spumant aromat」と書き、「「ヴィン・スプマント・アロマト」と発音します。 4. 弱発泡性ワイン 弱発泡性ワインはルーマニア語で「Vin petiant」と書き、「「ヴィン・ペティアント」と発音します。 5. 貴腐ワイン 貴腐ワインは貴腐菌発生後に収穫葡萄を原料にしたワインです。ルーマニアのワイン法では葡萄収穫に関する表示方法が明確に定められ、貴腐ワインのラベルに「CIB」が記載されます(葡萄収穫に関する表示方法を参照)。 6. 干しぶどうワイン 収穫してから陰干した葡萄を原料にしたワインです。干しぶどうワインはルーマニア語で「Vin de paie」と書き、「ヴィン・デ・パイイェ」と発音します。 7. アイスワイン アイスワインは自然的に凍った葡萄を原料にしたワインです。アイスワインはルーマニア語で「Vin de gheata」と書き、「ヴィン・デ・ゲアツァ」と発音します。ルーマニア産アイスワインの詳細はこちらへ。 8. 酒精強化ワイン 酒精強化ワインは、醸造過程でアルコールを添加することでアルコール度数を高めたワインです。酒精強化ワインはルーマニア語で「Vin licoros」と書き、「ヴィン・リコロス」と発音します。 9. その他のワイン ルーマニアでは上記以外にも様々なワインの種類が生産されていますが、DOCやIGは付きません。 ルーマニアワインの品質分類ルーマニアワインには下記のカテゴリーがあります。
ルーマニアのDOCワインDOCワインはルーマニアの最もグレードの高いワインです。DOCは「Denumire de Origine Controlata」の略です。発音は「デヌミーレ・デ・オリジネ・コントロラータ」で、日本語の意味は「原産地統制呼称」です。
DOCは、ルーマニアの農業製品に対して与えられる認証であり、製造過程及び品質評価において、特定の条件を満たしたものにのみ付与される品質の保証です。ルーマニアの法律では、DOCの基準を満たさないものは、DOCで規制された名称で製品を製造または販売することは違法とされ、厳しく罰せられています。全てのDOC製品は、ラベルや製品そのものに印刷された証印によって識別され、ラベル不当表示を行ったメーカーはライセンスを失うこととなり、ワイン生産が出来なくなります。 DOCのワインは定められた地域の原産品であるとともに、定められた製法で生産・加工・調整されたものでなければなりません。ルーマニアワイン制度の中で最も厳しい基準です。欧州連合(EU)の原産地名称保護(略称PDO)に相当しますが、欧州連合より厳しい部分があります。 ルーマニアのDOC法では生産地域、葡萄品種、葡萄品種の純度、アルコール度数、収穫期の葡萄の糖度、葡萄の1ヘクタール辺りの最大収穫量、栽培法、剪定法、醸造法、熟成法などが規制されています。 DOCワインの特徴(外観、香り、味わい)は格生産地のユニークな特徴(伝統、技術、土壌、気候等)を反映しなければなりません。葡萄の100%がそれぞれの産地で育った葡萄でなければなりません。また、葡萄の純度は100%でなければなりません。ブレンドの場合はブレンドの比率を明確にしなければなりません。 葡萄はヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis Vinifera)種でなければなりません。 それぞれのDOC産地で栽培可能な葡萄品種が決まっているため、各産地のワイン法で特定された葡萄品種以外の品種を利用できません。 葡萄の栽培やワインの生産の段階で全てのプロセスが法律通りに行われたとしても、最終的に農業省やそれぞれの産地のワインメーカー協会の代表者が毎年ワインの状態(外観、香り、味わい)を最終的に確認してから、DOCの認証が与えられます。 DOCワインを製造することが決して容易ではありませんが、法的な枠組みがしっかり固まっていることから消費者の信頼を得ることができ、DOCワイン法は全体的なワイン品質の向上のために働く法律です。 2017年のルーマニアワイン合計生産量は4,264,100竡で、DOCワインの生産量は819,510竡(約19.2%)でした。 ルーマニアのDOC産地一覧はこちらへ。 ルーマニアのIGワインIGは「Indicatie Geografica 」の略です。発音は「インディカツィエ・ジェオグラフィカ」で、日本語の意味は「地理的表示」です。
IGは、DOCと同様に、ルーマニアの農業製品に対して与えられる認証であり、定められた地域の原産品の生産地域、葡萄品種、葡萄品種の純度、最低アルコール度数、収穫期の葡萄の糖度、葡萄の1ヘクタール辺りの最大収穫量、栽培法、剪定法、醸造法、熟成法などの規制を目的とします。欧州連合の原産地名称保護(略称PGI)に相当します。 IGワインの特徴(外観、香り、味わい)は格生産地のユニークな特徴(伝統、技術、土壌、気候等)を反映しなければなりません。葡萄の85%がそれぞれの産地で育った葡萄でなければなりません。また、葡萄の純度は100%でなければなりません。ブレンドの場合はブレンドの比率を明確にしなければなりません。 葡萄はヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis Vinifera)種でなければなりません。 2017年のルーマニアワイン合計生産量は4,264,100竡で、IGワインの生産量は262,869竡(合計生産量の約6.2%)でした。 ルーマニアのIG産地一覧はこちらへ。 ヴァラエタルワインヴァラエタルワインはワインのラベルに葡萄品種名が明確に記載されたワインのことを指し、日本語の意味は「葡萄品種特定ワイン」です。ルーマニア語で「Vin Varietal」と書き、発音は「ヴィン・ヴァリエタル」です。
ヴァラエタルワインにはDOCやIGを付けることができませんが、葡萄の由来はルーマニア農業省認証取得済みの畑でなければなりません。認証されていない畑の葡萄や輸入葡萄の使用は禁じられています。葡萄品種の純度は85%以上でなければなりません。 葡萄はヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis Vinifera)種でなければなりません。ヴァラエタルワインの特徴(外観、香り、味わい、酸度やアルコール度数)はそれぞれの葡萄品種の特徴を反映しなければなりません。 2017年のルーマニアワイン合計生産量は4,264,100竡で、ヴァラエタルワインの生産量は158,943竡(合計生産量の約3.7%)でした。 テーブルワインDOC、IGとヴァラエタルではないワインは、テーブルワインと言います。ルーマニア語でテーブルワインは「ヴィン・デ・マーサ」と言い、「Vin de masa」と書きます。
葡萄はヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis Vinifera)種でなければなりません。 2017年のルーマニアワイン合計生産量は4,264,100竡で、テーブルワインの生産量は1,557,257竡(合計生産量の約36.5%)でした。 交雑種ワイン交雑種ワインはヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis Vinifera)種以外の葡萄品種で作られたワインを指します。交雑種は「ハイブリッド種」と呼ばれることもあります。交雑種ワインはルーマニア語で「ヴィン・ディン・ストゥルグリ・ヒブリジ」と言い、「Vin din struguri hibrizi」と書きます。
交雑種はヨーロッパ品種(ヴィティス・ヴィニフェラ種)とアメリカ品種を交配させて造られた葡萄品種です。19世紀にアメリカ大陸から入ってきたフィロキセラ(葡萄根油虫)によって、ヨーロッパの品種が殆どの絶滅状態になったため、フィロキセラへの耐性のあるアメリカ品種とヨーロッパ品種が交配させたことにより、交雑種が生まれました。しかし、交雑種ワインの品質に大きな問題があり、1930年に交雑種の禁止を求める運動がルーマニア全国に目立ち始めました。接木の技術が確立され、現在は交雑種ワイン作付けが法律で禁止されています。 共産主義時代から残っている交雑種の畑がまだ多くありますが、新しい交雑種の畑を植え付けることが法律上で禁止されているため、時間の流れとともに交雑種の栽培面積が確実に減って行きます。 交雑種ワインの輸出と生産された市町村以外での販売が法律上で禁止されています。生産者による自己消費と生産された市町村内だけの販売が例外的に許されています。 2017年のルーマニアワイン合計生産量は4,264,100竡で、交雑種ワインの生産量は1,465,521竡(合計生産量の約34.4%)でした。 葡萄収穫に関する表示方法1. CMDワイン
CMDは「Cules la Maturitate Deplina」の略称で、「葡萄は完熟期に収穫」を意味します。ルーマニア語の発音は「クレス・ラ・マトゥリターテ・デプリーナ」です。DOCワインでなければ、CMDをラベル表示することが出来ませんので、DOCとCMDを同時に表示します。ワインラベルには「DOC - CMD」又は「Denumire de Origine Controlata - Cules la Maturitate Deplina」と表示します。 2. CTワイン CTは「Cules Tarziu」の略称で、「完熟期より遅めに収穫」を意味します。ルーマニア語の発音は「クレス・タールジウ」です。DOCワインでなければ、CTをラベル表示することが出来ませんので、DOCとCTを同時に表示します。ワインラベルには「DOC - CT」又は「Denumire de Origine Controlata - Cules Tarziu」と表示します。 3. CIBワイン CIBは「Cules la Innobilarea Boabelor」の略称で、「貴腐菌発生後に収穫」を意味します。したがって、CIBワインは貴腐ワインのことです。ルーマニア語の発音は「クレス・ラ・インノビラーレア・ボアーベロル」です。DOCワインでなければ、CIBをラベル表示することが出来ませんので、DOCとCIBを同時に表示します。ワインラベルには「DOC - CIB」又は「Denumire de Origine Controlata - Cules la Innobilarea Boabelor」と表示します。 ワインの糖分に関する表示方法1) 辛口 / Sec(糖度 0 〜4 g/ℓ)
2) 中辛口 / Demisec(糖度 4 ~ 12 g/ℓ) 3) 中甘口 / Demidulce(糖度 12 ~ 50 g/ℓ) 4) 甘口 / Dulce(糖度 50g/ℓ以上) ワインの熟成に関する表示方法1) レゼルヴァ / Rezerva (オーク樽熟成6ヶ月間以上、瓶内熟成も6ヶ月間以上)
2) ヴィン・デ・ヴィノテーカ / Vin de vinoteca (オーク樽熟成1年間以上、瓶内熟成も4年間以上) 3) ヴィン・タナル / Vin Tanar (生産年に販売される若いワイン) ベレシュ・アレクサンドル・ダニエル
Daniel Alexandru BERES |