ルーマニアの蒸留酒 Romanian Spirits ワイン以外にもルーマニアの豊かな自然の力によって造られた、魅力的なお酒が多くあります。常に新しいもの、伝統のあるもの、そして何よりも人の心に感動を与えるものを探し求め、日本でなかなか手に入らない2000年以上の伝統を持つお酒の魅力を皆様とシェアーできれば幸いです。
今回はルーマニアの代表的な蒸留酒を紹介したいと思います。代表的な蒸留酒と言えば、ヴィンアルス、パリンカ、ツイカとホリンカが挙げられます。 ヴィンアルスとは? About Vinars 概要
ヴィンアルスはルーマニア産の極めて高品質なブランデーです。「ヴィンアルス」は日本語で「燃えるワイン」を意味をします(Vin = ワイン;ars = 燃える)。ヴィンアルスの歴史は13世紀までに遡り、素晴らしい伝統を持つお酒です。ジドヴェイ産地で作られたワインを蒸留し、同産地の樫の木から作られた木樽に5年以上熟成させます。 世の中の通常のブランデーは葡萄の搾りかすから作られていますが、ヴィンアルスは貴重な第一搾りの果汁だけを利用しています。原料は葡萄だけで、補糖、補酸を行わず、香料や着色料も一切添加されていません。葡萄と樽の自然的な力と800年以上のノーハウの積み重ねによって作られた豪華なブランデーです。 使われている葡萄品種は主にフェテアスカ・レガーラとイタリアン・リースリングです。葡萄は9月の前半に収穫され、第一搾りの果汁を発酵します。ワインの蒸留は春に行われ、2回蒸留します。2回目の蒸留が終われば、アルコール度数が70度を超えます。その後、ルーマニア産の樽で5年間ゆっくり熟成させます。 飲み方 ストレートで、常温。ブランデグラスがお勧め。 パリンカとは? About Palinca 概要
パリンカはルーマニアのトランシルヴァニア地方、マラムレッシュ地方、クリシャーナ地方とバナット地方で作られ、品質の高い伝統的なお酒です。パリンカは地理的表示(IG)伝統蒸留酒として欧州連合(EU)で認められ、他の地方で作ることが出来ません。 パリンカの原料として認められている果物はプラム、ミラベル、りんご、ラズベリー、ブラックベリー、アプリコット、桃、洋梨、フサスグリ、ブラックカラント、スコア、長老、マルメロとジュニパーベリーのみで、他の原料で作られたお酒は「パリンカ」と名乗ることが出来ません。 パリンカの伝統は2000年前まで遡り、極めて厳しい製法で作られています。果物の発酵は木の樽またはステンレスタンクで行い、蒸溜は銅のボイラー又は国が認めた蒸溜設備で行わなければなりません。又、蒸溜後のパリンカの香りと味わいはそれぞれの果実の特徴的な香りと味わいを持たなければなりません。熟成も可能ですが、木樽熟成、瓶内熟成又はステンレスタンク熟成だけが認められ、他の素材の樽や容器での熟成が法律上で禁じられています。パリンカのアルコール度数は40度以上でなければなりません。パリンカの原料は果物だけで、他の原料の利用は禁止のため、甘味料、香料、着色料などを一切含みません。もちろん、補糖や補酸も禁止で、100%ナチュラルなお酒です。 飲み方 欧州では、イタリアのグラッパやフランスのカルヴァドスと同じ飲み方ですが、ストレートのままショットグラスに注ぎ、一度で飲み干す飲み方も一般的です。基本的には食後に飲み、食事の消化にも良いとされています。アルコール度数が比較的に高いため、1日50ml以下が適量とされています。ブランデーのようにロックで飲まれることもありますが、水割りやお湯割の習慣はありません。 ツイカとは? About Tuica 概要
ツイカはプラムの発酵と蒸溜によって造られたルーマニアの伝統的なお酒です。原料として認められているのはプラムのみで、他の果物から造られた飲料はツイカと名乗ることができません。他の原料の利用は禁止のため、甘味料、香料、着色料などを一切含みません。もちろん、補糖や補酸も禁止で、100%ナチュラルなお酒です。 発酵は木の樽またはステンレスタンクで行い、蒸溜は銅のボイラー又は国が認めた蒸溜設備で行わなければなりません。蒸溜後のツイカの香りと味わいはプラムの特徴的な香りと味わいを持たなければなりません。熟成も可能ですが、木樽熟成、瓶内熟成又はステンレスタンク熟成だけが認められ、他の素材の樽や容器での熟成が法律上で禁じられています。ツイカのアルコール度数は24度以上でなければなりません。 熟成期間によって下記の三つのカテゴリーがあります:
飲み方 欧州では、イタリアのグラッパやフランスのカルヴァドスと同じ飲み方ですが、ストレートのままショットグラスに注ぎ、一度で飲み干す飲み方も一般的です。基本的には食後に飲み、食事の消化にも良いとされています。アルコール度数が比較的に高いため、1日50ml以下が適量とされています。ブランデーのようにロックで飲まれることもありますが、水割りやお湯割の習慣はありません。 ホリンカとは? About Horinca 概要
ホリンカはマラムレシュ地方で造られている「ツイカ」です。法律上ではホリンカとツイカの製法は全く同じですが、ホリンカという言葉に歴史的な背景があります。マラムレシュ地方の人々は昔から「ツイカ」ではなく「ホリンカ」という言葉を使っていたため、ホリンカは法律上で「地理的表示ツイカ」として認められています。従って、「ホリンカ」という言葉はマラムレシュ地方のツイカであることを保証する言葉です。 飲み方 欧州では、イタリアのグラッパやフランスのカルヴァドスと同じ飲み方ですが、ストレートのままショットグラスに注ぎ、一度で飲み干す飲み方も一般的です。基本的には食後に飲み、食事の消化にも良いとされています。アルコール度数が比較的に高いため、1日50ml以下が適量とされています。ブランデーのようにロックで飲まれることもありますが、水割りやお湯割の習慣はありません。 法的な枠組み About Law ルーマニアのパリンカ、ツイカとホリンカはフランスのカルヴァドスやイタリアのグラッパと同様で、「伝統蒸留酒」としてEU(欧州連合)に認められ、EU諸国、米国、南米やカナダなどでは伝統アルコール飲料として販売されています。
欧州連合の蒸留酒に関する法律が2008年に更新され、「伝統蒸留酒」の法的な枠組みが明確になっています。しかし、日本国内では、蒸留酒に関する法律が昭和29年(1954年)に定められ、それ以降は一度も更新されたことがなく、「伝統蒸留酒」という法的な枠組みはありません。又、蒸留酒に含まれているメチルアルコールの量に関する規定も、世界と異なります。ヨーロッパ、アメリカ、カナダ等ではは5mg/Lまで認められていますが、日本では1mg/Lまでです。ヨーロッパの伝統蒸留酒の場合は1.5〜2mgぐらいですので、ヨーロッパの伝統蒸留酒の位置付けは明確にされず、「アルコール飲料」としての輸入は困難です。不思議なことに「製菓用ブランデー」というカテゴリーでの輸入が認められているため、輸入元のラベルには「製菓用」と記載されています。 90年代と2000年代にはフランスのカルヴァドスやイタリアのグラッパーが「製菓用」として輸入され、暗黙の了解で通常のお酒として販売されていました。最近は「製菓用なので、飲んで良いのか」という意見も目立ってきました。対策として、レシピーを変更し、偽物の伝統蒸留酒を輸入し始めた企業もいます。酷い場合は、穀物由来のアルコールをブレンドしているにも関わらず、ラベルには伝統蒸留酒の表記をするメーカーもいます。ヨーロッパ人としては許せないことですが、こんなことが起きてしまうのはやはり法的な枠組みの不十分な整備ですね。これらの商品には「製菓用」の記載はありませんが、欧州連合の規定通りの伝統蒸留酒ではありません。例えば、それらの商品をEU内で販売すれば、規定違反になりますが、日本では法的な枠組みがないため、ラベルに表記が事実と異なっても罰せられないという大変不思議な事情が起きています。 結果的に、日本の法的な枠組みでは、ヨーロッパの伝統蒸留酒を「製菓用」のお酒として輸入するか、偽物を輸入するかという選択肢しかないのは現状です。 お勧めの蒸留酒 Spirits selection ルーマニアの蒸留酒の勉強を始めたのは最近のことで、プロとして進めることができませんが、ルーマニア国内での人気高い産地の蒸留酒をピックアップしました。ルーマニア蒸留酒一覧はこちら。
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